ライブで使われる音には大きく分けて2つの音がある。バンドやPAを経験した人なら誰でも知っていることだが、ここでは誰でもわかるようになるべく簡単に書きたい。
1つ目の音は観客、ライブを聞いている人たちが聞く「オモテ」の音。海外ではFoH(エフオーエイチ、Front of House)と言う。ステージの演奏者の演奏する音をいいバランスでミックスした、バランスの取れた音だ。コンサート会場などでは客席の後方中央にミキサーなどの機材とオペレーターが陣取っている。客席で鳴っている音を一番的確に判断するためにあの位置にいるわけだが、基本的にはどの客席にいても聞こえない音があってはいけないので、大きな会場になればなるほど、左や右に偏り過ぎたミックスはしないし、左・右の定位よりも大事なのはハウリングが起こらないように会場の音響を調整したり、ステージの直前と遥か後方では聞こえるタイミングが違う(音は1秒間に340メートルしか進まない)ので、後方で鳴らすスピーカーは同時に鳴らさないで若干遅らせて音を出したりしている(そうしないと音が鳴った後に前方からの音が遅れて聞こえてきて、とても聞くに堪えない音になってしまう)。
話が脱線してしまった。そしてもう1つの音が「ウラ」の音、ステージ上で演奏者が聞く「モニター」の音。このモニターの音は観客に聞こえることはないし、演奏者が個別にバランスを変えることができる音だ。たとえばボーカルは「自分の声とギターとキーボードだけでいい。ドラムは要らない」とか、ドラムは「ボーカルとベースとドラムだけでいい」など、演奏者ひとりひとりが希望するバランスで聞くための音だ。そういう意味で、裏の音は演奏者の数だけあるといって良い。ライブハウスなどでは「オモテ」の音も「ウラ」の音も、基本的には後方のオペレーターが担当するが、大きなコンサートになると「ウラ」の音だけを担当する機材(モニターミキサー)とエンジニア(モニターエンジニア)がいて、「オモテ」の音から切り離して作業する。
その「ウラ」の音の聞き方には、これも大きく分けて2つの聞き方がある。1つは足元やステージ脇のスピーカーから聞く方法、そしてもう1つが現在普及が進んでいる、イヤホンから聞く方法。インイヤーモニター(IEM)、略して「イヤモニ」と呼ばれる。
僕はイヤモニを使うが、サミーコイワバンドの他のメンバーはほぼ全員、モニタースピーカーを使う。イヤモニはプロの世界では使用率が高く、アマチュアでは逆にモニタースピーカーの方が使用率が高い。ボーカリストとして、イヤモニを使うメリットはたくさんある。まず、ドラムやエレキギターなど、大音量の楽器の音に惑わされることなく自分の歌が聞こえることだ。イヤホンをするということは耳栓をするのと同じ効果があるので、イヤホンから聞こえる以外の音を遮断してくれる。自分の歌や演奏は良く聞こえる分、音を外しにくくなる。他の音に負けないようにがなり声で歌う必要もないので喉に負担がかかりにくい。僕もそうだが、ワイヤレスのイヤモニを使用した場合、モニタースピーカーから離れて歩き回っても、聞こえる音は変わらない(まだそんな大ステージで歌うこともないし、ギターは相変わらず有線)。適正な音量が保てれば耳への負担はむしろ少ない。他にも、PAをおこなうエンジニアにとっても、モニタースピーカーから鳴った音をマイクが拾ってしまうフィードバック、いわゆる「ハウリング」を起こしにくくなるので助かる。一方、イヤモニのデメリットは何かといえば、やはり周囲の音が聞こえなくなること。MCの時など、演奏しない時は片耳のイヤホンを外す人もいるし、わざわざ周囲の音をマイクで拾ってイヤモニに混ぜる人もいる。僕は特別なことはしていない。そこは孤独な静寂の世界。
さて、ここまでなぜこの話をしてきたかなのだが、先日、僕が長年愛用しているShure(シュアー)のSE535というイヤホンの調子が悪くなり、修理に出した際の出来事をお伝えしたかったからだ。右側のイヤホンだけビリビリと音が割れるようになったため、イヤホンの端子をよく見たら、端子が潰れてしまっていた。修理できるショップを探していたところ、e☆イヤホンというイヤホン・ヘッドホン専門店を見つけたので問い合わせると、まずは端子の交換を試して、もしそれで改善しなければ安価な点検料と返送料だけで見てもらえるとのこと。早速送って見てもらった結果、やはり端子が破損しているとのこと、買い替えやメーカー修理よりも安価に済むと思い、修理してもらうことにした。
修理が済み、返送されてきたイヤホンを試してみたところ、ビリビリと音が割れる症状はなくなり、無事直っていた。よかったよかった、、と思ったのも束の間、イヤホンを普段使い用の無線アダプターに2、3回付け替えただけでビリビリが再発してしまったのだ。高い授業料を払ったと思って新しいのに買い替えようか、諦めつつも再度e☆イヤホンに問い合わせたところ、「とにかく実物を見てみないと何とも言えません」とのこと。率直に、「今回も同額の修理代になりますか?修理しない場合は点検料と返送料が必要ですか?」と尋ねたところ、今回に限り修理しないとなった場合には(こちらからの送料に加え)点検料、返送料はいただきませんとのこと。ご好意に甘え(e☆イヤホンさん、ありがとう!)再度点検をしてもらうことにした。結果、ビリビリは何と左側のイヤホンでも確認でき、「ケーブルにも緑化(経年劣化の症状)が起きているため修理は難しいです。現状でのお返しとなります」とのこと。残念な報告だったが、現状で返送してもらうことにした。
数日後、返送されてきたイヤホンを手に取り、「このイヤホンともお別れか」とつぶやきながら大滝詠一さんの「君は天然色」を聞いてみたところ、なんとビリビリ音が直っている!?現状で返送だったはずが、直ってる。e☆イヤホンが好意で再度端子に手を加えてくれたのか。他のイヤホンやケーブルとの組み合わせを試してくれた上に、修理代も返送料もいらないという気前の良さ。ともかく無事にイヤホンの音の問題は解決した。経年劣化しているのは間違いないので、今度音が割れたりした時にはいよいよ買い替え時かもしれない。その時は迷わずe☆イヤホンから買おうと思う。2025年4月現在、販売を一時ストップしているが、カスタムイヤーピースも同時にお願いしようと思う。耳型を取ってもらい、自分専用のイヤーピースを作り、それを付けたイヤモニでさらにいい歌をお届けしていきたい。
e☆イヤホン、お勧めです!(念のため、ステマ等、ビジネス上のつながりは一切ありません)。
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